メルヘン侍、時雨れて候
「メルヘンさん、いや、オマエね、もっと緊張感もって言葉を選びなさいよ」

更に肩の筋肉がゴボォと、大きく隆起しメルヘンさんはとうとう壁に背中を付けてしまう。

「まともな長編を一本も書けないようなガキが、調子に乗ってんじゃないよ」

あんなにゆるゆるだった着物がぱちぱちに張り付き、鬼の形相でメルヘンさんを見据えた。

ひるみそうになったが、メルヘンさんも負けじと腰を落として構えた。

汗が首筋を伝う。

瞬きもせずに、ご隠居をじっと見た。

「こぬのか、こぬならこちらから行くぞ!」

「おう!」

この人を越えたい。ぜったいに受け止めてやる。

そして、

そのあとで、一撃で決めてやる。
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