メルヘン侍、時雨れて候
読んでる人には気づかれないか

と、一人で落語のように首を振りながら勝手にしゃべるって話を進めるかと、メルヘン侍は考えた。

まあね、僕の目の前に、ご隠居がいると思えば、いるわけで、

世界なんてものは想いの強さで出来ている

僕のイメージするご隠居を……

明確に・・・

もっと・・・

メルヘンさんはご隠居に会ったとき、そう、第一回のイメージを思い出した。あのときどんなやりとりをしてたっけ・・・


『何をさっきからブツブツと言っておるのだ』

「ホラ出てきた」

『なにがホラじゃ』

「いえいえ、こっちの話でさ、いや、うれしいねぇご隠居ぉ」

『今日はなんだ?』

話をはじめようとすると、ご隠居の姿が歪んでかすみ出した。メルヘンさんはイメージを固めるために最初の頃に交わしたやりとりをはじめた。

「いやね、やっぱり僕、おさむらいさんという職業は向いてないと思うのですよ。刀とか重いし、痛いの怖いし」

『それで?』

「これから先どうしたもんかと」

メルヘンさんは思いの丈をご隠居にぶつけた。







『おぬし剣術には自信がないらしいが、

その不得手なもので、この先やっていく自信がないと。

う~ん。 こまりましたねぇ』


「はぁ~。でも僕、お侍さんだしー」

『でもさっきから聞いておるとメルヘンやポエムを生業にと・・・』

「はぁ。そっちのほうがあっしに向いてるのかなぁと

お花とか超好きだしー」

『うーん。 こまったねぇ。こういうのはどうだろうか?』

「はぁ」

『ポエムやメルヘンじゃ人は斬れないが』

「へぇ」

『言葉で人を斬ることは出来る』

「はぁー なるほそー」

『ここではなんだ 庭に出ようゾ』

「へい。ソウコナクッチャ」

♪メメ メルヘン メメメ メルヘン この世はなんとかパラダイス♪


< 7 / 48 >

この作品をシェア

pagetop