涙と、残り香を抱きしめて…【完】

俺の口に入れようとしていたケーキを軽くくわえ、ソレを俺の顔の前にソッと差し出す。


そこまでされたら、食べないワケにはいかないだろ…


生クリームの甘ったるい味が口の中に広がると、俺の口の周りについたクリームを星良がペロリと舐めた。


今朝まで俺を拒絶してた女とは思えない大胆な行動に、少々、面食らってしまった。


「星良がこんな事する女だとはな…」

「嫌…だった?」


心配そうに眉を下げた彼女の体を引き寄せ
お返しとばかりに、キスをする。


「嫌なワケないだろ?
でもな、主導権を奪われるのは好きじゃない…」

「あ…っ…」


そう、お前は俺のモノ…
俺の腕の中で甘えていればいい…


邪魔なスーツを手早く脱がすと、見覚えのあるブラとショーツが現れた。


「これは…勝手に着けてきたのか?」

「だって、凄く着け心地いいんだもん…
脱ぎたくなくて…」

「ったく…困った部長だ」


口ではそう言ったものの
本心は間違いなく嬉しかった。
星良を思い浮かべながらデザインしたんだからな。


だが今は、それさえも星良の体を隠す邪魔な存在でしかない。


全てを脱ぎ捨てた裸体を抱きしめ
優しく愛撫する。


悦ぶお前を見たい…
感じるお前を見せてくれ…


それは、今まで経験した事のない感情
自分の欲求を満たすだけのセックスしかしてこなかった俺が、初めて愛おしいと想いながら女を抱いている。


星良の頭のてっぺんから、足のつま先まで
絹の様な髪の一本、一本まで
全てを俺だけのモノにしたくて…


夢中で星良を求めいた…


何度も…何度も…

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