涙と、残り香を抱きしめて…【完】
忘れかけてた夢《島津星良side》
《島津 星良side》
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眼を覚ますと、裸のままの私の体に毛布が掛けられていた…
ローテーブルの上には、飲み掛けのワインとケーキ
そして、蘇ってくる昨夜の情事
そうだ。私は成宮さんに抱かれたんだ…
でも、彼の姿はない。
乱れた髪を掻き上げながら体を起こすと、軽いめまいがした。
「はぁーっ…。もう7時半か…用意しないと…」
なんとも言えない気分…
彼と寝た事を後悔してるワケじゃないけど、これで仁と完全に決別したと思うと、少しやる瀬無かった。
昨夜はあんなにはしゃいで成宮さんに甘えたけど、本当にこれで良かったのかなぁ…
仁への想いを成宮さんで誤魔化しているのかもしれない。
でも、成宮さんに対する"好き"という気持が確実に大きくなってるのも事実。
そんな事を考えながら、出掛ける用意を済ませ部屋を出る。
そして、右隣の仁の部屋ではなく
左隣の成宮さんの部屋のチャイムを鳴らした。
ゆっくり開いた扉の向こうには、"今の彼"が優しく微笑んでいた。
「おはよう…もう出れる?」
「あぁ」
2人でエレベーターに乗ると、彼の腕が私を包み込む。
「昨夜は知らない内に帰っちゃったんだね」
「う…ん。
本当は朝まで星良を抱いていたかったんだけどな…
まだ仕事が残っていたから…」
「そう…」
「で、どうだった?昨夜は?」
「えっ?どうって?」
「何回、イった?」
「なっ…。朝から変な事言わないで!!」
意地悪な顔して笑う成宮さんを付き飛ばすと、再び抱きしめられ耳元で甘い声が囁く…
「今夜は、もっと乱れていいぞ…」