涙と、残り香を抱きしめて…【完】

静まり返る社長室


俺は拳を握りしめ
唇を噛み締める。


これ以上の侮辱はない…
今までの俺だったら、即辞めると言っていただろう。


だが、俺にはこの会社を去ることの出来ない
もう一つの事情があったんだ…


「…やります」

「そうか…
でも、やるからには中途半端では困る」

「分かってます。
俺の実力をお見せしますよ」

「あぁ、楽しみにしてる。
じゃあ、君を皆に紹介しないとな」


水沢専務が初めて笑った。


再び、デザイン企画部に戻ると
水沢専務が俺を社員に紹介し
今回のランジェリープロジェクトに関わる社員を紹介する。


一般の社員は4名
3名が20代の女性で、もう1名が、あのトンチンカン新井

課長が32歳の女性

「課長の西 明日香(にし あすか)です。
宜しくお願いします」

「宜しく…」

「後、主任と部長が居るんだが…
2人はどうした?」

そこでまた、新井がしゃしゃり出て来る。


「はい。山本主任は生地屋さんに寄ってから出社するそうで
島津部長はタバコを買いに一階へ…」

「はぁ~…
タバコくらい買い置きしてけよな…」


水沢専務が呆れてため息を付く。


すると、白髪交じりの男性が慌てた様子でオフィスに入って来た。
そして、そのすぐ後から一人の女性が現れる。


「あ、専務…お早うございます」


それは、あのブラックスーツの女だった…


「あら?あなた…昨日の…」
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