涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「蒼は、いつも夜は一人で過ごしてた。食事はお店のあまり物…
それでも文句一つ言わず我慢してくれてたの。
でもね、お金が無いから大学は諦めて欲しいって言った時、初めて蒼が反発したのよ。
どうしてもデザインの勉強がしたいからって…
奨学金を借りたけど、それでも足りなくて、いくつもバイトを掛け持ちして学費を稼いで頑張ってた。
やっと卒業して有名なデザイナーさんにお世話になる事になったんだけど、見習いの給料なんてタカが知れてる。
なのにこの子ったら、少ない給料から毎月、私に仕送りしてくれてね…
欲しい物もあったろうに、親らしい事なんてなんにもしてやれなかった私の為に毎月…毎月…欠かさず仕送りしてくれて…
口は悪いけど、優しい子なのよ」
「そうだったんですか…」
「でも今は、随分、出世したみたいだし
あなたみたいな素敵な彼女も居るって分かった。
もう心配しないでいいわね」
ニッコリ笑ったお母さんに、私も笑顔で頷いた。
自分勝手な人だと軽蔑した事もあったけど、成宮さんって、ホントは優しい人なんだ…
彼となら…幸せになれる…
なんだかそんな気がして、眠る成宮さんを見つめ微笑んでる自分を素直に認められた。
そして、お母さんに2階の部屋にお布団を敷いてもらい酔っぱらった成宮さんを寝かせお風呂を借りた。
お風呂から出て、私も寝ようとお布団にもぐり込むと、眠ってるはずの彼の手が私の足に触れゴソゴソと動き出す。
「星良…シたくなった…」
「な、バカな事いわないで!!
ここはマンションじゃないのよ」
「分かってる。でも、シたい…」
「お母さんにバレたらどうするの?」
「別にいいさ」
「あ…っ。成宮…さ…んっ」