涙と、残り香を抱きしめて…【完】

それから暫く仕事の話しをし
一通りの打ち合わせが終わると


島津星良が突然
「今夜の予定…空けておいてね」
と、微笑む。


ドキッ!!


「…えっ?」

「成宮部長補佐の歓迎会するから」

「あ…歓迎…会?」

「そう。宜しくね」


今、俺は間違いなく
変な期待をした。


バカか…俺は…



そして、定時で仕事を終えた俺達デザイン企画部は
会社近くの居酒屋へ…


予約した畳席に案内されると
若い女子社員が俺の隣を陣取り
目の前には、トンチンカン新井


目当ての女は、遥か遠い席か…


テーブルには、懐かしい料理が並ぶ


手羽先にドテカツ、味噌おでん
子供の頃によく食べたものばかり


東京では、地方出身だとバカにされるのが嫌で
無理して背伸びしてた時もあった。
こんな仕事をしてるから余計に…


なんだか…ホッとする。


「ではー優秀なデザイナー
成宮蒼さんを歓迎して…かんぱーい!!」


やけにテンションの高い島津星良が声を上げると
全員が一斉にグラスを持ち
「乾杯!!」と叫ぶ。


「今日は無礼講だからねー」


すると隣の女子社員がヒソヒソ話しを始める。


「島津部長の無礼講って…怖いよね?」

「うん。一番、無礼講なのは
島津部長だったりして…」

「そうそう!!今日もアレ…出るかな?」

「……?」


あの女の何が怖いんだ?
それに、"アレ"ってなんだ?


不思議に思ってた俺だったが
その言葉の意味は、すぐに分かった…



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