涙と、残り香を抱きしめて…【完】

初めは大人しく西課長と飲んでたが
酒が進むにつれ
徐々に様子が変わってきた。


仕事中のクールな表情は消え
どこにでも居るような女みたいに
ケラケラ笑い
無邪気な表情を見せる。


気になってチラチラ見ていたせいか
彼女と目が合った。


すると…


「おーい!!ナルちゃーん
飲んでるぅー?」

「はぁ?」


今、確かに俺のこと、ナルちゃんって呼んだよな?


気付けば、徳利(とっくり)片手に俺の目の前に立っち
不敵な笑みを浮かべている。


「ちょっとゴメンね~」


隣に座ってた女子社員を押し退け
俺の隣に座ると、体を密着させ
お猪口に徳利の酒を注ぎ出した。


「ねぇ~飲んでぇ~」


甘ったるい声ですり寄ってくる彼女に面喰らいながら
お猪口の酒を飲み干すと
今度は俺に注げとばかりに
徳利を渡してくる。


「えっと…お猪口は…」

「もぉ~そんなちっこいのでチマチマ飲んでらんなーい」


俺の空になっていたビールのグラスを持ち
「これにお願い…」なんて、潤んだ瞳で甘えてくるから堪らない。


「ふーっ…おいちぃ…」


マジかよ?日本酒を一気飲み?


「あれぇ~もしかして…
間接キスしちゃった?」

「あ、だな…」


ほぼ、俺に抱き付いてる状態
完璧に胸が当たってる…


これ以上は、マズい…
俺の理性が飛びそうだ…


「んん…、じゃあさぁー」

「何?」

「ホントに…キスしちゃう?」

「……!!」

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