涙と、残り香を抱きしめて…【完】
あんな事をした後に、平然とした顔で仕事の話しをする仁に苛立ちを覚えた。
「…社長室?なぜ?
もしかして…いよいよクビって事?」
「バカ!!そんなんじゃない。
マダム凛子が、お前に話しがあるそうだ」
「マダム凛子が?私になんの話し?」
「行けば分かるよ…」
結局、仁は私が欲しかった答えをくれないままリビングを出て行った。
取り残された私が、どんな気持ちであなたを見送ったかも知らず…
その夜、私はベットの中で成宮さんに何度も詫びていた。
成宮さんが苦しんでいる時に、私はなんて愚かな事をしてしまったんだろう…
酔ってたとはいえ、仁とキスしてた時、成宮さんの事など完全に忘れ甘いキスに酔いしれてた。
後悔しても、しきれない。
ごめんなさい…
本当に、ごめんなさい…
もう二度と、あなたを裏切ったりしないから…
だから、私を許して…
そして、月曜日
私は社長室の前で最高に緊張していた。
マダム凛子が私になんの話しだろう?
成宮さんの事を責められるのかもしれない。
そうなら、ひたすら謝るしかないよね…
深呼吸をし、気持ちを落ち着かせると、意を決して社長室の扉をノックする。
「失礼します…島津です」
扉を開けると、ソファーに座っている綺麗な女性と眼が合いドキッとした。
この人が…マダム凛子?
テレビや雑誌で何度も見掛けた事はあったけど、実際に本人を目の当たりにすると、改めてその美しさと存在感に圧倒さた。
「あなたが島津星世良さんね?座って」
「は、はい」