涙と、残り香を抱きしめて…【完】
私の言葉通り、彼は私を激しく抱いた…
いつもは撫でる様に愛撫する指が、今日は強く乱暴に私を刺激し、鈍い痛みを感じる。
でも、その痛みさえも快感だった…
もっと、もっと、私をいじめて欲しい…
例え一瞬でも、あなたを裏切った私に罰を与えて…
乱れる私を更に突き上げてくるまるで別人みたいな成宮さんの背中に爪を立て、私は心の中で、そう叫んでいた。
同時に果てた私達は、お互いの体温を感じながら息を弾ませ見つめ合う。
「ねぇ…お願いがあるの…」
「なんだ?」
「マダム凛子との企画が無事終わったら…」
「うん」
「…結婚…しようよ」
「えっ…」
私からのプロポーズ。
「ずっと、一緒に居たいから…」
やっと成宮さんが笑ってくれた。
「そうだな。結婚しよう」
もう迷いなど無かった。
私はこれからの人生、この人と…成宮蒼と生きて行く。
とても清々しい気持ちで、素直に幸せだと思えたんだ。
それから私達はシャワーを浴び、身支度を済ませるとホテルをチェックアウトした。
少し早い昼食は、彼のリクエストのあんかけスパ。
成宮さんは、今からマダム凛子と会う約束をしてるそうで、名古屋駅に併設されてるマリオットアソシアホテルへ行くと言う。
「じゃあ、それが終わったら、どこかで落ち合わない?」
「…そうだな。じゃあ、前に星良と行った俺の同級生がやってるパブでもいいか?
店は5時からやってるから、先に行っててくれ。
凛子先生との話しが済んだら、直ぐに行くから」
「分かった。せっかく名駅まで出て来たんだし、それまでショッピングでもしてるわ」
と、言ったものの…
さすがに5時間もショッピングはしていられない。
「4時か…取り合えずパブに行ってみよう」