涙と、残り香を抱きしめて…【完】
プチ家出の原因は、おそらくアレだな。
成宮の件で安奈が星良を激しく責めていたのを俺が止めたから…
星良をかばった訳ではないが、結果的に安奈を叱ったのが気に入らなかったんだろう…
でもな…なぜ安奈はそれほどまで成宮の事を…
そう思った時、きっきの星良との会話を思い出し身震いがした。
『あの2人、もしかして…』
『まさか、デキてるとでも言いたいのか?』
『もし…そうだったら、仁はどうする?』
あの2人が…?
接点のほとんど無い安奈と成宮が、そんな関係になるはずが無い。
第一、成宮は星良に惚れてる。
安奈だってそうだ。10年前のあの事があって以来、アイツは男嫌いになってしまい彼氏なんて絶対、作らないと豪語していた。
『男は仁君だけで十分…』それが安奈の口癖だった…
安奈が帰って来なかった2日間、俺の頭の中に星良と安奈…2人の大切な女が交互に現れ悩まされていたが、やはり星良への想いを断ち切る事は出来なかった。
すまない…安奈
分かってくれ…
「安奈…帰ってんだろ?」
安奈の部屋をノックし、声を掛けるが応答が無い。
「…開けるぞ」
ゆっくりドアを開けると、安奈は虚ろな瞳でぼんやりベットに座っていた。
その横に座り、覚悟を決め星良の事を話そうとすると、安奈の方が先に口を開いた。
「ねぇ…仁君。あたしって、子供っぽい?」
「はぁ?なんの事だ?」
「大人の女性には見えない?」
安奈のヤツ、何が言いたいんだ?
答えに困り、取り合えず「そんな事は無いだろ…」と言うと、安奈が俺をキッと睨み怒鳴る。
「適当な答え方しないでよ!!こっちは真面目に聞いてるのに!!」
「…安奈」
…お前…まさか…