涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「全員って…君も?」

「ええ。それはそれは、濃厚なチュウをして頂きました」

「濃厚ねぇ…」


なんか、気が抜けた…


「まさか…成宮部長補佐
島津部長が本気でキスしたとか
思ってませんよね?」

「バカな…」


鼻で笑ってみせたが、内心は動揺しまくりだった。


「ダメですよ。彼女は…」

「ダメって、何が?」

「好きな人…居るみたいだから…」


好きな人…


西課長の言葉が胸に突き刺さり
鈍い痛みを感じる。


「へぇ~…好きな人って、付き合ってないの?」

「さぁ…そこまで詳しくは知らないから」

「そう…」


男っヤツは、ガキみたいなものだ。
手に入らないと思うと、余計に欲しくなる。


「まさか…水沢専務…とか?」

「はぁ?水沢専務?まさか!!」

「なら、どうして酔っぱらってる島津部長を連れてったんだ?」

「あぁ、水沢専務は…そうね…
島津部長の保護者的な存在だから…」

「保護者?」


益々、意味が分かんねぇ…


「じゃあ、そろそろ二次会行きますかー?」


まだ西課長に聞きたい事があったのに
トンチンカン新井が絶妙なタイミングで話しを遮る。


あのヤロー…
空気読めよな…


あっ、まてよ…
島津星良は、ここに居る全員とキスしたって言ってたよな?
て、ことは、この新井とも?


そう考えると、新井のニヤ気顔がムカついて仕方ない。


コイツ、絶対、いつかシメてやる…

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