涙と、残り香を抱きしめて…【完】
______ 8年前…
高校を卒業し、夢だったモデルになるべく
両親の反対を押し切り
名古屋のモデル事務所に登録し
2年が経った頃だった。
島津 星良 20歳
本当は、東京のモデル事務所にも応募したけど
面接でことごとく落とされた。
理由は分かってた。
凄い人見知りで上がり症だった私。
自己アピールが全く出来ず
ニッコリ笑うことさえ出来なかったんだ…
そんな私を唯一、認めてくれたのが
名古屋のモデル事務所だった。
初めは読者モデルに毛が生えた様な仕事
それでもアルバイトをしながら一生懸命頑張った。
でも、2年経っても
カメラを向けられると緊張して固まってしまう…
おまけに、スタッフと上手くコミニケーションを取れない私の仕事は徐々に減り
どう見ても私よりスタイルが悪い子に仕事を取られていく
そんな時、たまたま聞いてしまった
スタッフ達の雑談
「星良ちゃんってさぁ
スタイルもいいし、可愛いんだけど
使い辛いよねー」
「そうそう!!
なんか、暗いってゆーか…
ポーズ決めてても、自信なさげで
絵にならないんだよなぁ」
「読者の人気もイマイチだし
もっと笑顔の可愛い子にした方がいいかもね」
ショックだった。
子供の頃から背が高く、自分より背の低い男子からは"大女"なんてからかわれ、普通にしてても目立つから、何かあった時に叱られるのはいつも私。損な役回りばかりしてきた。
それが凄く嫌で、身を屈め目立たぬ様に生きてきた。
そんなコンプレックスの塊みたいだった中学生の時、転機が訪れた。
テレビで観た『パリコレ』に私の眼は釘付けになる。
私より遥かに背の高い女性達がスポットライトの光を受け、全員が自信満々で輝いていた。
やっと自分の居場所を見つけた。
私の生きる世界はここしかない…
本気でそう思ったんだ。