涙と、残り香を抱きしめて…【完】
なのに…
私は自分でチャンスを潰している。
自暴自棄になってた私を心配してくれたのは
事務所の女社長の佐々木さんだった。
「ねぇ、星良ちゃん。
あなたこのままじゃ、仕事来なくなるわよ。
もっと自分に自信を持ちなさい」
「…はい」
「実はね、オーデション付きなんだけど
一つ仕事の依頼が来てるの…」
「ホントですか?」
「でも…あなたに出来るかしら…」
「やります!!やらせて下さい!!」
「そう…
でもね、もしこれがダメだったら
モデルは諦めた方がいいわ」
「えっ…」
「こんな調子でモデルを続けても
あたなの為にはならない。
他の道を探した方がいい」
「そんな…」
私は、唯一の居場所さえも失い掛けていた…
「…下着モデル…出来る?」
「下着…モデル…」
一瞬、躊躇した。
でも断れば、私は夢も居場所も全てを無くし
また昔の自分に逆戻り
それだけは、絶対に嫌だった。
「出来ます」
「分かった。
オーデションは明日
選ばれるのは1人だけ
まだ出来たばかりのマイナーな会社だけど
インターネット販売だから
人気が出れば星良ちゃんも注目されるはず
頑張るのよ」
「はい」
社長には、そう返事したけど
本当は、凄く怖かった。
下着モデルなんて初めて…
緊張して食事も喉を通らず
寝不足で当日を迎えた。