涙と、残り香を抱きしめて…【完】
優しく笑う男性に
なぜか安心感を覚えた私
それに、どうせ不合格なんだという
半分投げやりな気持ちもあり
自分の感じたままを口にした。
「…ショーツですけど
この横のレースの生地が固くて
肌に当たるとチクチクします。
それにブラのワイヤーはフィット感がなくて
脇の下辺りに凄く違和感があります。
これじゃあ、外した時、肌にワイヤーの痕が残るだろうし
長時間着けてるのは
ハッキリ言って、辛いです」
私の言葉に、その男性の顔色が変わった。
そして、隣にすわってたカメラマンが呆れた様に言う。
「モデルになりたいって思ってる会社の商品を
よくそれだけケナせるなぁ~」
「あ…でも、今…正直にって…」
「いくらそう言われても
普通言うか?そこまで…」
「あ…」
彼の言葉を鵜呑みにし
バカ正直に答えた私の常識の無さに
失笑するカメラマン
どうしょう…
私、凄く失礼な事言っちゃったのかも…
「す、すみません…」
慌てて頭を下げると
さっきの男性が席を立ち
こっちに歩いて来る。
そして、私の前で立ち止まり
暫くの間、怖い顔して私を見下ろしていた。
怒鳴られると思い
肩をすぼめて視線を下げると…
彼はとんでもないことを言ってきたんだ…
「そのブラ…外してみて」
「えっ?」
「ワイヤーの痕が付いてるか確認したい」
「ええっ?」
うそ…でしょ?