涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「えっ?ホントに?」


今度は私が大声を上げた。


「ええ、ホントよ。
ショーの結婚式が終わるまで成宮部長には何も言わず、予定通り結婚式を挙げるの。

そして、ショーが無事に終わった後で彼の真意を聞き今後の事を話し合う」

「ショーが終わった後で?」

「そう。別れてるのに結婚式なんて出来ないでしょ?
そんな事したら、皆を裏切る事になる。
本当の結婚式を挙げるってのが重要なんだから…」

「それは…そうだけど…」

「そうすれば、本当の結婚式をするというショーの最大の目的は達成出来るし、誰にも迷惑掛けずに済むじゃない。

でも、その後に色々あって2人は別れました。って事になっても、それは個人の問題だし周りの人を裏切った事にはならないでしょ?

それに所詮、ショーの中での結婚式よ。
婚姻届を出すワケじゃない。

なんちゃって結婚式だと思えばいいのよ」

「なんちゃってって…」


さすが明日香さん…そこまで割り切れたら気が楽だけど…


「凄い悪知恵だね…」

「あら、悪知恵とは失礼な!!
でもこれは、あくまでも成宮部長が結婚式をする気があるって事が前提よ。

それに、まだ本当に成宮部長と安奈って娘がデキてるか分かんないじゃない。
一緒に住んでるってのも、星良ちゃんの想像でしょ?」

「うん…」

「とにかく、成宮部長の気持ちを探るしかないわね」

「探るって…どうやって?」


興味深々の私に、明日香さんは不敵な笑みを浮かべ言った。


「私に任せといて。周りから攻めてみるわ。
星良ちゃんは普段通りにしてるのよ。いいわね!!」

「う、うん」


私が大きく頷くと、今度は探る様な視線を向けてくる。


「で、もし、成宮部長がシロだったら…どうする?」

「えっ?」


一瞬、明日香さんの言ってる言葉の意味が分からず首を傾げた。


「成宮部長と安奈って娘が男女の仲じゃなかったら、本気で結婚する気はあるのか…って聞いてるの。

もしかして、星良ちゃんの気持ちはもう、成宮部長から離れてるんじゃない?」


< 272 / 354 >

この作品をシェア

pagetop