涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「はい、乾杯!!」

「お疲れ様です」


私がピンク・マーベルの専属モデルになって一ヶ月
撮影も無事終了し
ネットに新作ランジェリーがアップされた。


「ここ数日、サイトの観覧数が凄いことになってる。
注文もウナギ登りだし
星良ちゃんのお陰かな?」


ホテルのバーカウンターで
優しく笑い掛けてくれてる人
水沢仁


「そんな…私は何も…」

「それ、本心?」

「えっ?」

「俺の知ってるモデルの子達なら
そこで『そうですよ。モデルの私が良かったから…』なんて言うけど…
君は謙虚だねぇ」

「はあ…」

「もっと自分に自信を持ったら?
実際、君のお陰なんだから」


オレンジ色の間接照明に照らされた彼の笑顔にドキッとする。


「どうした?顔赤いけど…
もう酔った?」

「い、いえ…」


男性と、それもこんな大人の人と2人っきりで飲むのは初めて
どんな話しをしていいのかも分からない。


だから、出される名前も知らないカクテルをひたすら飲み続けた。


「ちょと…星良ちゃん…大丈夫か?」


彼の声が遠くで聞こえる。
周りの景色が回ってるのは…なぜ?


あぁ…私、酔っぱらっちゃったのかな?


そこからの記憶は…


ない。


目覚めたのは、飲んでたホテルの一室だった…


そうやって男女の関係になる。
よくある話しだ。


でも、私達は違ってた。
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