涙と、残り香を抱きしめて…【完】
時は同じく
深夜2時…
都内某所
近い将来、私の人生に大きく関わる事になる男性が情事を終え
ベットの上で息を弾ませている。
「…終わりじゃ…ないよね?」
「あん?」
「明日、東京を離れるんでしょ?」
「ああ…」
面倒くさい女…
やっと、切れる。
「ねぇ、これからも私、あなたの彼女だよね?」
「当然だろ?」
満足気に微笑む女の髪を撫で
俺は優しくキスをしてやる。
これが最後のキスだとも知らず
嬉しそうに浮かれてる女を
俺は心の底で嘲笑っていた。
女なんて、所詮そんなモノ
ただの仕事の道具にしかすぎない。
「でも、ヘッドハンティングなんて凄いよね。
仕事の出来る人って…素敵よ」
「ありがと」
「私も一緒に、名古屋に行っちゃおうかなぁ~」
冗談だろ?
「バカだなぁ…
お前が近くに居たら、会いたくて仕事が手につかないだろ?
少し離れて仕事に集中したい…
分かってくれるよな?」
「…うん」
俺は起き上がり
朝が早いからと女の部屋を後にした。
「ふっ…」
冷えた廊下を足早に歩き出す。
もう二度と、あの女を抱くことはない…
…じゃあな。
体は…まあまあだったよ。