涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「…私が、ピンク・マーベルに?」
「あぁ、君はモデルとしてだけじゃなく
色々な意見を聞かせてくれた。
一番初めに君にダメ出しされたランジェリー
星良ちゃんの言った通り改良したら
とても評判が良くなってね。
俺はデザイナーだから
着け心地よりデザインが大事だと思ってたんだ…
でも、その考えは間違ってた。
その下着を一日中、体に着けてるんだ
違和感のあるモノは、当然、敬遠される。
手に取って確認出来ないネット通販だからこそ
それが大事なんだと気付かされたんだよ」
ブランデーのロックを一口飲み
彼は続ける。
「それから君が指摘してくれた商品を見直すと
必ずヒットした。
君には才能があるんだよ。
その才能を、ピンク・マーベルの為に使ってくれないか?」
彼の言葉は嬉しかった。
でも…
「モデルとしては…失格なんですね」
ポツリと言った言葉に
彼は異常に反応し
声を荒げる。
「違う!!そうじゃない!!
専属契約してからの星良ちゃんは
見違えるほどモデルとして成長してた。
撮影では、いつも輝いていて
俺は素直に思ったよ。
素敵…だって…」
「…素敵?
ホント…ですか?」
「あぁ、モデルとしても…
女性としても…」
それって、もしかして…
「私を一人の女性として見てくれてたって事ですか?」
探る様な視線で彼を見つめると
少し照れた様に笑った水沢仁が
小声で囁く。
「もちろん。見てたさ…」