涙と、残り香を抱きしめて…【完】

そしてその夜
私達は体を重ねた…


満たされていく心と体


愛する人に抱かれる事が
こんなにも幸せなモノだったなんて…


もちろん、頭の片隅には彼の奥さんに対する罪悪感があった。
例え別居しているとはいえ
彼は奥さんのモノ


でも、それさえも忘れてしまうほど
私は彼を愛していた。


私が探し求めていた居場所は
ここだったんだ…


この逞しい水沢仁の腕の中




それからの私は変わった。


モデルを辞め
ピンク・マーベルの社員になり
誰にも負けないくらい必死で働いた。


仕事でも、仁に認めて欲しかったから…
大人のあなたに少しでも近づきたい
その一心で…


ティーン向けのファッション事業を軌道の乗せる為
人見知りだった私が自ら街頭に立ち
お洒落な子達に片っ端から声を掛け
今興味のある事を聞きまくり


週一で東京まで出掛けては
人気のショップをリサーチし
夜遅くまで企画書とにらめっこ


お陰で流行を先取りした商品で売り上げを上げた。


そして、その功績が認められ
私は28歳にして、部長に昇進したんだ…


ピンク・マーベルと共に
私も成長した。


全て、仁の為…


愛するあなたの為…


でも、この8年間
あなたの口から"愛してる"という言葉は一度も聞けてない。


そして、彼はまだ奥さんのモノ


どんなに辛い事でも耐えると言った私だったけど
8年という年月は、その気持ちを少しずつ変えていったんだ…


今の私が欲しいのは
あなたとの約束された未来…


確実な愛…



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