涙と、残り香を抱きしめて…【完】

成宮さん…有難う…
本当に、有難う…


彼の優しさを感じずにはいられない。
堪え切れず流した涙は、鮮やかなブルーに輝く"愛しい涙"の中で音も無く弾けた。


それはもう、ほろ苦い涙の味ではなく
甘く優しい愛の味がした。


そして、お決まりのケーキ入刀が行われ私と仁の結婚式は幕を閉じる事となる。


再びスポットライトを浴びランウェイを戻ると、チャペルの中で皆が拍手で私達を迎えてくれた。


明日香さんが泣きながら「星良ちゃん、良かったね!!」と抱き付いてきて、私もまた泣きそうになる。


マダム凛子の姿を見つけ感謝の気持ちを伝えると、彼女も満足そうに微笑み私の頬に手を当てる。


「素敵な結婚式だったわ。
おめでとう…島津さん。

でもこのドレス、20年も前のだけど、なかなか良かったでしょ?
これね、手直しするのに苦労したのよ~
あなたのサイズに合わせて仕立て直したんだんだから…

時間も無いし、他の人には秘密だったし、久しぶりにミシン使ったら肩こりが酷くなっちゃったわ」

「あ、すみませんでした…」

「いいのよ。それに、成宮が手伝ってくれたから、予定より早く仕上がったし…
ねぇ、成宮」

「はい…」


このドレスを、成宮さんが?


「このドレスにはね、成宮の想いも詰まっているのよ。
大切にしなさい」


成宮さんの想い…
彼には、どんなに感謝してもし切れない。


「さあ、私はショーの挨拶をしてくるから、皆は打ち上げの用意宜しく!!」


そう言うと、マダム凛子はチャペルを出て行く。


するとそこへスタッフに連れられ両親が現れた。


「ゲッ…!!」


思わず後すだりする私に、母親が襲い掛かってくる。


「何が『ゲッ!!』よ!!この親不幸者!!こんな立派な結婚式を挙げてもらうっていうのに、親を呼ばないなんてどういうつもりよ!!」

「あぁ…ごめん。色々あって…」

「色々って何よ?」

「あの…だから、相手が変わって…」

「はぁ?相手って、旦那が変わったって事?何それ?そんなのアリなの?」


アリかと言われても…なんて言ったらいいんだろう…


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