涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「待ちくたびれたぞ。何やってたんだ?」
「仁には秘密。女同士の話しよ」
安奈さんと顔を見合わせ笑いながら控室のドアを開けようとした。
すると不機嫌な顔をした仁が私の手を掴み歩き出す。
「ちょっと…仁。着替えなくっちゃ…」
「着替えなんていいんだよ。あ、安奈、俺と星良は打ち上げ出ないからな。
適当に誤魔化しといてくれ」
「え?打ち上げ出ないの?マズいんじゃない?」
私達の会話を聞いて安奈さんがニヤニヤ笑ってる。
「星良さん、仁君もう我慢出来ないみたいだよ」
「我慢って…ヤダ…何言ってるのよ」
「早くしないと鬼の凛子が来るよ。ほら、行った!行った!」
全く、なんて親子だろう…とか思いながらも、実は私も早く仁と2人っきりになりたいって思ってたりして…
急かす様に私の手を引く仁。そして夢中でドレスの裾を持ち上げ階段を駆け上がる私。
奥から二番目の部屋のドアを開けると、ベットまでの距離が待ち切れず歩きながらキスを交わす。
隣のマダム凛子の部屋に比べれば、全然豪華じゃないけど、そんな事はどうでもいい。
仁が居てくれれば、ここが私のスイートルーム。
もつれる足でようやくベットに辿り着いた私達は、貪る様なキスをしながら競う様にお互いの服を脱がせていく…
背中のファスナーが一気に下ろされ、ドレスと肌の間に侵入してきた仁の大きな手が乱暴に私の胸を探ると、堪らず声が漏れる。
「いい声だ…」
柔らかい仁の唇と尖った舌が肌を滑り、そのゾクゾクとする感覚に否が応でも反応する体。
この時を待っていた。ずっと、ずっと待ってたんだよ…仁。
優しくなんてされなくていい。もっと強く、もっと激しく仁を感じたい。
何時しか一糸まとわぬ姿になっていた私の両手首を掴むと、ソレをベットに押し付け、仁がほくそ笑む。
「覚悟しろよ…」
ハラリと舞い降り、私の頬を掠める黒髪。
乱れた彼の髪からは、私の大好きな仁の香りがした。
甘く…危険な香り…