涙と、残り香を抱きしめて…【完】
身動き出来ない体は、仁の成すがまま。
全てをさらけ出し、仁の愛撫に身を委ねる。
少しばかり残っていた羞恥心は既に消え去り、甘い吐息とイジワルな言葉に翻弄(ほんろう)され、でもそれが嬉しくて…痺れる様な感覚に上気する。
過敏に反応する私の体を確かめる様に、仁の指が少しずつ下へと下りて行く。
でもその指は、私の期待を裏切り焦らすみたいに動きを止めた。
欲しいという欲求に耐えきれず首を振る私を、ただ黙って眺めている仁。
口角を上げ、まるで楽しんでいるかの様に…
「仁の…イジワル…」
「イジワル?その言い方…気に入らないなぁ
悪いのはどっちだ?
俺以外の男に抱かれたくせに…」
「えっ…?」
それって、成宮さんの事を言ってるの?
まさか仁…ヤキモチ焼いてる?
「8年掛けて星良を俺好みの女にしてきたんだぞ。
アイツに抱かせる為に、俺はお前を女にしたんじゃない」
「仁…」
その少しスネた顔もそそられる。
「じゃあまた、私を仁好みの女にして…」
そう言って仁の肌蹴た胸にキスすると、私の顎を持ち上げ「どうしようか…?」と怖い顔をする。
そして、仁の瞳が怪しく光ったと思った瞬間、待ち焦がれた甘い刺激が全身を貫き、敏感になっていた体からは熱モノが迸る。
そうだよ…これを待っていた…待ってたんだよ…仁。
快感の波が押し寄せ、更にその上の快感を求め仁の背中に爪を立て、ねだる。
「…欲しい」
掠れた声で何度も求めながら私は別世界へと堕ちていく…
でも、そんな私の願いが叶ったのは、それからかなり時間が経った後。
先に昇りつめたのは私の方だった。その姿を満足気に眺めながら仁があの言葉を囁く。
それは、私が8年間待ち続けた言葉…
「星良…愛してる…」
体も、そして心も満たされていく…
「私も、仁を愛してる…誰よりも仁を…愛してる」
そして、再び襲ってくる快感の波。強く抱き合い激しく揺れながら私達は同時に果てた…