涙と、残り香を抱きしめて…【完】

別れのラブレター《成宮蒼side》



《 成宮 蒼 Side 》

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ピンク・マーベル デザイン企画部 
デザイン室兼部長室


「成宮ぶちょー!!島津課長から連絡ありましたー?」

「…新井、お前なぁ~朝から何度同じ事を聞く?
心配するな。星良から連絡があっても、お前にだけは絶対に教えないから」

「えぇ~そんなぁ~…」



《拝啓、星良、元気にしてるか?面倒な挨拶は省略するぞ。

お前がパリに行って、もう10日になるんだな…

今日は星良にどうしても渡したいモノがあって荷物を送る事にした。
工藤さんからの預かりモノだ。

で、ついでに俺のこのラブレターも忍ばせる事にした。

分かっているとは思うが、間違っても水沢専務には見せるなよ。


取り合えず、こっちは皆元気だ。

以前、星良と企画したランジェリーの売り上げが好調で、新作を出す事になったんだ。
部全員、ヤル気満々で頑張っているよ。
星良が居ないのは寂しいって声がチラホラ聞こえてくるがな…

で、工藤さんからの預かりモノは、彼女の記事が載ったモード・ジャパンの最新号で、この前のショーが特集されている。

まだ発売前だが、既に駅や街中には宣伝用の広告が溢れていて、これがやたら眼に付く。

嬉しい事なんだが、一つだけ気にくわないのが、雑誌の表紙と同じ写真が使われているって事だ。

どうしてコレをチョイスしたのか…俺はハッキリ言って納得出来ない》



新井が俺のデスクの上にあったモード・ジャパンの雑誌を手に取りニヤけている。


「でも~こんなの雑誌の表紙にしちゃっていいんでしょうかねぇ?成宮部長」

「俺に聞くな!!トンチンカン新井!!」

「だって~専務と島津課長の濃厚チューですよ?
2人を知ってるだけに照れちゃいます」

「お前の事なんて、どうでもいいんだよ!!
とにかく俺は胸くそ悪い!!」

「あれぇ~もしかして、成宮部長…
専務にやきもちですか?
成宮部長って、意外と女々しいんですねー」


……殺意。


「うわっ!!ぶ…ちょう…苦しい…」



《ファッション雑誌なのに、なんで誓いのキスの写真をどアップで載せるんだ?》


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