涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「えっ…いいの?」
「あぁ」
「成宮部長補佐の引っ越し祝いに
今日だけな」
「ラッキー!!」
つい嬉しくて、素の自分に戻ってしまい
仁にタメ口で話してた。
「島津部長と水沢専務って、仲いいですよね?」
怪しげな成宮蒼の視線にドキッとして口ごもる私とは対照的に
仁は涼しい顔で
「あぁ、島津は娘みたいなモンだからな」
と、全く動揺を見せない。
「そう言えば、西課長も言ってましたよ。
水沢専務は島津部長の保護者だって」
「そんなとこだ」
娘…?
娘にエレベーターで、あんな事する?
夜な夜な私の部屋に来て
エッチな事してるのは
どこの誰よ。
でも、なんとか上手く誤魔化せたみたい…
会社では、社員に私達の事は秘密
私と仁の関係を知ってるのは
社長と西明日香さん
つまり、西課長だ。
彼女は私がピンク・マーベルの社員になって半年後に入社してきた。
年は私より4つ上で、なんでも相談出来るお姉さん的存在
でも役職は私の方が上だから
色々、気を使ってくれて
凄く助かってる。
私と仁の事を疑う社員には
それとなく関係を否定してくれたりして
実に頼れるお姉様だ。
あのキスの後もフォローしてくれたんだな…
今日のランチは私のおごり確定だ。
「乗って」
「失礼します」
仁の愛車、シルバーメタリックのBMW
流線型のボディは、今日もワックスが良く効いてピカピカ輝いてる。
私が助手席
成宮蒼が後部座席に乗り込むと
シートベルトをした仁がバックミラー越しに成宮蒼を見た。
「で、成宮部長補佐は、彼女とか…居るのか?」