涙と、残り香を抱きしめて…【完】
初めての恋《成宮蒼side》
《成宮 蒼 (なるみや そう)side》
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東京から新幹線で1時間半
俺は、名古屋の地に足を踏み入れた。
10年ぶりか…
いや、14年になるか…
ここは、俺の生まれ育った街
だから、あの話しを持ち掛けられた時
懐かしさもあって
気を許したのかもしれない…
俺は東京の大手アパレル会社で
専属のデザイナーをしていた。
昨年、俺のデザインした作品が大ヒットし
業界では権威ある賞も受賞
一躍、時の人
順風満帆
俺の将来は約束されたようなモノだった。
そんな時、一本の電話
『成宮蒼さんですね?
私、名古屋に本社があります
ピンク・マーベルの田村と申します。
実は、折り入って成宮さんにお話しが…』
ヘッドハンティングだった。
株式会社 ピンク・マーベル
昨年、業界一の業績アップを遂げ
マザーズにも上場した注目度№1の会社だ。
店舗は持たず、コストを最小限に抑え
通販とネット販売で売り上げを上げてきた。
その会社が新規事業を展開する為
インパクトのあるデザイナーを探していたと言う。
その白羽の矢が立ったのが
…俺だった。