涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「知りたいな…
島津部長が惚れた男の事」

「な、なぜ?
私が誰を好きでも
あなたには関係ないでしょ?」


私、かなり焦ってる。


「そんな事ないさ
関係あるから聞いてるんだけど?」


成宮蒼が不敵な笑みを浮かべた
その時だった…


キキィィーーッ!!


突然の急ブレーキで、後ろの成宮蒼がつんのめり
危うくナビで顔面強打寸前


「うわっ!!危ねぇーっ」

「あ~悪い。信号赤だったよ。
危ないからシートベルトはちゃんとしてくれよ」


シラっとした顔で仁が笑った。
でもその眼は、全然、笑ってない。


車内は一気に険悪なムード


会社に着くまでの数十分
居心地の悪い空気が漂い続け
最悪な雰囲気…


やっと会社の駐車場に到着し
車を降りようとした成宮蒼に向かい
仁が吐き捨てる様に言う。


「人のプライベート詮索するより
仕事に力入れてくれよ。
優秀なデザイナーさん…」

「…チッ」


舌打ちをした成宮蒼が乱暴にドアを閉め
サッサと行ってしまった。


「…仁、言い過ぎだよ」


ため息混じりにそう言う私を
仁が睨み付ける。


「星良が酔っぱらってアイツにキスなんかするから悪いんだろ?」

「えっ?私が悪いの?」

「当然だろ?あのバカに隙を見せたお前が悪い」

「でも、アレは無意識の行為で…」

「問答無用!!
罰として、今日から一週間
セックス無し!!」

「ええーっ!!
そんなぁ~酷いよ。仁!!」

「ふん!!欲求不満で悶々してろ!!」


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