涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「で、一週間、エッチ禁止令が出たワケ?」

「そう!!
酷いと思わない?
ちょっと酔っぱらってキスしたくらいで
あんなに怒らなくてもいいじゃない!!」

「ちょっと…ねぇ…」


ランチで賑わう大通りのお店を避け
路地裏の俗に言う"めし屋"でカボチャの煮物を突っつく私と西明日香さん


ワンコインでお腹一杯食べられるこのお店は
何気にお気に入り


何より会社の若い子達が来ないって事が魅力なのかも…
せめてランチの時くらいは部長という肩書を忘れてリラックスしたい。


「そんなに怒んないの!!
裏を返せば、専務がヤキモチ焼いてるって事じゃない。

ふふふ…
専務ったら、意外と可愛いとこあるわね」

「あ…そうなのかな?」

「そうよ。それで、一週間禁欲って
普段はどれたけシてるの?」

「えっ…と、週5くらい…かな?」

「ええーっ!!
週に5日もエッチしてんのぉー!!」


明日香さんの大絶叫に、周りのサラリーマン達の視線が集中


「わわわっ!!
明日香さん、声が大きい…」

「あ、ごめん…
でも、それって凄くない?
よく体力持つわね」

「そうなの?
それが普通だと思ってたけど…」

「あなたじゃなくて、専務よ。
40歳でしょ?
まるで20代の男の子並みじゃない。

頑張ってるんだ…専務
なんだか私、感動して涙出てきちゃった」


明日香さんったら、ホントに泣いてるし…


「もう!!
明日香さんはどっちの味方なの?」


スネる私を横目に
明日香さんはサバの塩焼きを頬ばりながら言う。


「心配しなくていいわよ。
星良ちゃんが禁欲って事は、専務もそうでしょ?

その内、我慢出来なくなって
迫ってくるわよ」


あ、そっか…なるほど…


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