涙と、残り香を抱きしめて…【完】
明日香さんに相談して
少し気持ちが楽になった。
はずだったんだけど…
ランチを済ませ
オフィスに戻ると、皆やけに楽しげに盛り上がってる。
「あら?専務も居るじゃない」
「…うん」
そして、見知らぬ色っぽい女性も…
「部長お帰りなさい」
私と明日香さんに気付いた新井君がテンション高めで近づいて来る。
「あの人は?」
「あぁ、あの人は、下着モデルの理子(りこ)さんですよ。
僕達のプロジェクトの顔になる人
凄い美人ですよねー
試着の段階から加わってくれるそうですよ。
今日は挨拶に来てくれたみたいです」
「そう…」
知らなかった…
もうモデルが決まってたなんて…
このプロジェクトの責任者は私なのに
その私になんの相談も無く
モデルを決めるなんて
信じられない。
「よう、島津部長。
この子、モデルに決めたから
宜しく頼む」
「……」
「どうした?」
私の気持ちなど、全く気付かない仁にイラッとした。
「モデルを決める時は、私も参加させて頂けるものだと思ってましたから
驚いてます。
私なりにイメージというモノがありましたから…」
「そうか…それは悪かったな。
急に決まったから、相談する暇もなくてな…
でも、理子ちゃんはスタイルもいいし
色気もある。
大人の女性向けだし
適任だと思うが…どうだ?」
「どうって…もう決まった事なんでしょ?
私が今更、何を言っても無駄じゃないの?」
一瞬にして、オフィスに険悪なムードが漂う。