涙と、残り香を抱きしめて…【完】
こんな事で大人気ない…
頭では分かってた。
でも、言わずにはいられなかったんだ。
部下達の顔からは笑顔が消え
仁は困った表情で私を見てる。
日々、チームワークを大切にしたいと言ってきた私なのに
ソレを壊してるのは、間違い無く今の私
それでも変なプライドが邪魔をして
引き下がる事が出来ず
言わなくてもいい事まで口走る。
「専務が何もかも決めるのなら
私は必要無いですよね?」
そう言った直後だった。
オフィスの隅にある
パネルで仕切られたデザイン室から
成宮蒼が現れ私を呼ぶ。
「島津部長、デザインの事でちょっと相談がある。
来てくれないかな?」
「あ…」
「急いでるんだ。早く…」
「分かった。すぐ行く…」
心の中で"助かった"って思った。
これ以上、話しをややこしくしたくない。
背中に皆の視線を感じながら
逃げる様にデザイン室に入ると
大きくため息を付く。
そんな私を見た成宮蒼が
呆れた様に少し笑った。
「らしくないな。
いつもの島津部長はどこへ行った?」
「えっ…?」
「気持ちは分からない訳じゃないが
今、言うことじゃないだろ?
他の社員が動揺してる。
モデルの件は、少し頭を冷やしてから専務と話し合ったらどうだ?」
あ…
「もしかして…
私を呼んだのは…」
「そっ!!あの場面じゃ島津部長も
引くに引けないだろ?
助けてやったんだよ」