涙と、残り香を抱きしめて…【完】
【揺れる想い】
秘密《島津星良side》
《島津 星良side》
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なんとかフィットネスクラブに入会出来る事になったけど
逃げる様に自分の部屋へ帰って行った仁の態度か気になって仕方ない。
仁がそのフィットネスクラブに入会すると言い出したのは
今年の4月
仕事がどんなに忙しくても
時間を作っては、週に2回必ず通ってる。
そして、その日の帰りはいつも遅い。
今まで、明日香さんの『若い星良ちゃんと付き合う為に体力作りをしてるんじゃないの?』という言葉に納得してたけど
ちょっと違う様な気がしてきた。
怪しい…
何か秘密の匂いがプンプンだ。
そして、2日後…
仕事が終わると、余り乗り気じゃない仁と共に
フィットネスクラブに向かった。
受付で入会手続きをし
ロッカールームで着替えを済ませて
仁と合流
3階にあるゴルフ練習場で、大きなスクリーンに向かってボールを打つ練習を始めたんだけど…
やっぱり、仁の様子がおかしい。
どこかソワソワして、落ち着きが無い。
おまけに、私が話し掛けても上の空だ。
「ねぇ、ヘッドの向きはこれでいいの?」
「あぁ…」
「スイング変じゃない?」
「ん?あぁ」
「…仁!!私の話し聞いてる?」
全く教える気がない仁に腹が立って怒鳴ると
さすがに驚いたのか
仁が視線を上げた。
でも、その視線が向けられた先は
私ではなく、なぜか後方。
不思議に思い
振り返ろうとした私の後ろから
元気のいい女の子の声がした。
「こんばんはー!!仁君!!」