涙と、残り香を抱きしめて…【完】

いきなり頬を打たれ驚いた顔でよろめく理子


「アンタ…何…するの?」

「いい加減にして!!何がエステよ?
あなたのプライベートなんて、どうでもいいのよ!!

ただ、仕事はちゃんとして!!
あなた、それでもプロなの?」

「なっ…、偉そうに…
アンタにそんなこと言う資格なんてないよ!!」

「なんですって?」


すると、今まで興奮していた理子が、気味の悪い笑みを浮かべ星良を見た。


「私、知ってるんだから…」

「知ってるって…何を?」

「アンタ、モデルをクビになって
このピンク・マーベルに拾われたんでしょ?

だからモデルの私にヤキモチ焼いてるんだ!!
そんな人に、とやかく言われたくないわよ!!」

「なっ…」

「2人共、もうやめろ!!」


今にも掴み掛りそうな2人の間に割って入るも、お互いの怒りは収まらない様で、俺を挟んで睨み合いは続く。


「フン!!部長なんて、お情けでもらった役職なんじゃないの?」


押し黙る星良
そして、険しい顔で理子を凝視すると、一言…


「辞めてもらうわ…」

「はぁ?」

「聞こえなかった?あなたには、この企画から外れてもらう。
だからもう、自由の身よ。
好きなだけエステでも、ネイルサロンでも行けばいい…
御苦労さま」

「おい、島津部長、本気で言ってるのか?」


だが、俺の問い掛けなど聞いちゃいない。


「…もう用はないから、出てって…」


それは、さっきまで俺の誘いにうろたえてた女とは別人のよう…殺気すら感じる。


「分かったわよ!!出てくわよ!!
でもね、これで済むと思わないでよ。
絶対、後悔させてやるから…」


理子は捨て台詞を残し、乱暴にドアを閉め出て行き
星良はそのドアを睨み付けながら怒りに震えていた。


ったく…マズい事になったな…



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