涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「…私が…モデル…ですって?」
「そうだ」
驚きの表情を見せた星良が、ブンブンと首を振る。
「バカなこと…言わないで…」
「何がバカだよ。今日、この試着品の確認をしてOKを出すか決める予定だったろ?手直しするとなると、それこそ時間が無い。発注が遅れるぞ。
別に本格的にモデルになれって言ってるワケじゃない。
この試着品の具合を見るだけだ」
もっともらしい事をツラツラ並べる俺だったが、本心は別にあった。
確かに、この試着品の確認を急いでいたのは事実だが、俺がデザインしたこの下着を着けた星良を見たかった…
「理子をクビにした責任を取れよ」
半分、脅しだな…
ムッとした星良が「…分かったわよ!!」と声を荒げる。
「でも、今回だけ…。直ぐに別のモデルを探すから、いいわね?」
「ああ…」
試着品を手に奥のフィッティングルームに入って行く星良。
でも、どういう訳か、なかなか出て来ない。
カーテン越しに声を掛けるも返事がない。
「星良…どうした?開けるぞ」
少し躊躇しながらカーテンを開けると、俺のデザインした下着を着けた星良が恥ずかしそうに俯き立ってる姿が目に飛び込んできた。
スラリと伸びた長い手足
妖艶なくびれた腰
ふっくらと盛り上がった胸
そして、滑らかな白い肌…
想像以上だ…
星良がぎこちなく着けごこちを説明してるが、俺は上の空。
ただ、その肌に触れたいという欲求だけが大きくなっていく。
だが、ここで取り乱すワケにはいかない。
俺は平静を装いソッとブラの上から胸に触れた。
「ヤっ…。何?」
驚いた星良が慌てて胸を手で隠す。
その少し恥ずかしそうな顔が堪らない…
「手をどけろ…
勘違いするな…仕事だ」