涙と、残り香を抱きしめて…【完】

星良の表情が見る見るうちに変わり
眼には今にも零れ落ちそうな涙が光っていた。


それと同時に、抵抗して強張っていた体の力が抜けていく…


「辛かったんだろ?」


俺の言葉に素直に頷く星良


「どれだけお前が苦しんできたのか…
その涙を見れば分かる。
今まで泣いた分、俺が幸せにしてやるから…」


少しの沈黙の後、星良の掠れた声が耳に届いた。


「ほんと…に?」

「あぁ、俺はお前以外の女に興味はないからな…」


そう言って、優しく頬を撫でキスすると、微かに涙の味がした。


気付けば、俺の体にしがみ付き
甘える様に身を預けている星良


可愛いヤツ…


フッと微笑むと、不思議そうな顔で「何?」と上目遣いで俺を見る。


「これ以上キスしてたら、最後まで欲しくなる。
続きは夜の楽しみにとっておくか…」

「もう…成宮さんたら…」


どこか吹っ切れた様なはにかんだ笑顔
照れた顔の星良もいい…


もう一度、俺達はキスを交わすと体を離し
仕事モードへと切り替え試着室を後にした。


今日はクリスマス・イヴ…
久しぶりに嬉しいプレゼントを貰った気分だ。




そして仕事が終わり、誰も居なくなったオフィスを2人して出ると、途中買い物をしてマンションの星良の部屋へと向かった。


奮発して買った最高級ワインを片手に、小さなイチゴのショートケーキを美味しそうに食べる星良の笑顔が俺の心を和ませる。


「ワインとケーキって合うのか?」

「うん。合う!!成宮さんもケーキ食べる?」

「俺はいいよ…」


そう言ったのに、俺の口に無理やりケーキを押し込もうとしてくる。


「やめろって…」


逃げようとしてる俺の体を力任せにソファーに押し倒し星良がニヤリと笑った。


「これでも…食べてくれない?」



< 99 / 354 >

この作品をシェア

pagetop