天使に逢えた日

カーテンの隙間から細く差し込む朝の光の眩しさが
重い瞼を無理やりこじ開けた。
見慣れない天井が見える。
寝返りをうつと、肩から腕に走る鈍い痛みが刺激となって
少しずつ霧が晴れていくようにぼやけた意識がはっきりと戻ってきた。



そうだった・・・ 引越ししたんだ。



腕の痛みは普段使わない筋肉を使った為だろう。
重いダンボールを運ぶなんて力仕事はここ何年もしたことがない。
ちょっと料金をケチったばかりに
ベッドの組み立ては自分ですることになった昨夜。
疲れと面倒くささに途中でドライバーを放りだした。


身体を起こし両手を挙げて背中を伸ばすと
背中と腰がきしむように痛かった。
いてて、と声がでてしまう。
フローリングに直に引いた布団はやっぱり固くて
寝心地はいいとは言えなかった。
痛む背中と腰をさすりながら起き上がってカーテンを開いた。


朝日に照らし出された部屋を占拠しているのは
あちこちに積み上がったダンボール。
これを一人で片付けるのかと思うとついため息が出てしまう。
実家なら頼まなくても母が手伝ってくれるのに、って
いかんいかん!と頭を振った。
そういう娘としての甘えを捨てるのも一人暮らしの目的の一つだった。

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