天使に逢えた日
うっわ、ダサっ。イケてない・・・でもいいか。
どうせ今日は一日かけて荷物を片付けるのだし
コンビニまでなんて5分くらいだ。
引っ越したばかりのこの近所には知り合いもいない。
まだ誰にも引っ越しのことは話していない。
誰かに会うはずも、そんな偶然もあるはずがない。
着替えるまでもないわ、楽勝♪と申し訳程度に手櫛で前髪を整えてドアを開け
一歩外へ出たところで、どん、と何かにぶつかった。
「うわ!」
「きゃ!」
ぶつかったひょうしによろけて尻もちをついてしまった私の前に
バサバサと乾いた音を立てて白いビニール袋が落ちてきた。
「ごめんなさい!すみません」
「こちらこそすんません」
独特のイントネーションと聞き覚えのある声に、まさか?と急いで顔を上げた。
「あ!」
「あぁ?」
「香夏子サン?」
「阿達クン?」
「何してんの?」の声が重なって、驚いた視線が合わさって
「何や。そうやったんか」と笑った阿達くん。
嘘だ!近所どころか玄関の前でばったり知り合いに会うなんて。
彼は落ちた袋を拾い上げ、ぺたんと床に座ったままの私に「ホラ」と手を差し出した。
「あ、ありがとう」とその手を取って立ち上がると
「昨日の引越し、香夏子サンやったんか」と彼が微笑んだ。
なんや似てる人がおるなぁと思てたんやけど
まさか本人だとはなあ、とまた彼が笑った。
「どうして知ってるの?見てたの?」
「え?だって見えたし」
「何で見えるのよ?」
「何でて言われても・・・」
彼は困惑した顔で後手に頭をかいた。
そのとぼけた様子に咄嗟に思い浮かんだのは
ストーカーの文字だった。