らぶ・みー 
彼の両手が私の左手を包み込んだ。

そのまま肩の位置まで持ち上げ、私の目の前で、薬指から結婚指輪を外した。



「後で返すから。」

「....うん。」



答えるのが精一杯だった。

驚いた。気がついてたんだ。

パン教室の日は生地をこねる時に邪魔なので、私は結婚指輪をしていない。

でも今日は、わざと指輪をして来た。

自分で自分にブレーキをかけるために.......



「寒すぎるから、一旦、車戻ろうか。」

「うん.....。」



彼に肩を抱かれて、海風に吹かれながら車へ戻った。

ブレーキのなくなった薬指を気にしながら。
< 54 / 325 >

この作品をシェア

pagetop