*9月26日* ―それでも君が好き―
「じゃ そろそろ授業始まるし戻るね。」
そう言って剛は私の頭を撫でた。
「ボサボサになるー。」
とか言いながらもニコニコの私。
「ばぃばーぃ。」
自分のクラスに戻るまで ずーっと手を振って無邪気に笑う剛に 心臓がうるさかった。
そう 長かった片想いが実ったんだと実感する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
中学2年の暑い日 私は剛を知った。
女子バスケ部のマネージャーをやっていた私が 怪我人を保健室に連れて行っているとき たまたま見たんだ。
グラウンドの真ん中にキラキラ輝く剛を。
「ねぇ あれ誰? あの真ん中にいる人。」
怪我の手当てをしながら部員に聞いたの。
それで私は宮津 剛という名前とクラスを知った。
「宮津は ちっちゃい頃からの野球少年でね 女子からはなかなかモテるみたいだよ。」
すごい偶然で その女の子が剛と仲が良かったから その日にアドをもらうことができたんだ。
初めてのメールはすごく内容がうすかったけど 付き合った経験のなかった私にとっては 夜も眠れなくなるくらいに幸せな事だった。
「剛くん」「高木」
そうやって呼び合っていたのに いつしか私は 「剛」って呼ぶようになった。
他の誰からも剛と呼ばれていなかったのに ただ1人だけ私は 彼を剛と呼んだ。
それだけで私は 剛の特別になれた気がして ちょっと自惚れてたのかな。