*9月26日* ―それでも君が好き―
「いいよ 交換しよ。」
胸ポケットから携帯を出す。
「えっ奈穂いいの? 宮津に怒られちゃうんじゃない?」
潤が心配そうに言う。
「大丈夫だってば。 剛はそんなに私を縛り付けたりしないよ。」
にこって笑って見せたら 「…そっか。」って笑い返してくれた。
「俺のアド送ったから メールしといて。」
満足そうな顔で私に携帯を返してくれた佐々木くん。
あぁ やっぱそういうことね。
佐々木くんは潤の事が好き。
あの目は 私に訴えているように見えたもん。
"頼む 協力してくれっ。"って。
違うかな?
違ったら 簡単にアド交換しちゃってちょっと軽いよね。
だけど とりあえず後で確信に迫ってみよっと。
適当な相槌を打っていたら お弁当は空になり 気付いたらお昼休みももうあとわずか。
最近 こうやって何となく過ごす時間が増えた気がする。
夏架や砂依は いつも2人一緒。
こうやって私が潤たちとご飯を食べるたびに 夏架と砂依が遠くへ行ってしまう気がする。
かといって 里香ちゃんたちは私にはちょっと合わなくて 一緒にいても気を遣うだけ。
やっぱ 新しいスタートって色々大変だな。
自分の居場所を見つけるのに 私も皆も必死だ。