*9月26日* ―それでも君が好き―
「そこにはすぐ反応するね。 奈穂ガキだな。」
剛のSっ気たっぷりのにんまり笑顔。
ガキは嫌だけど 剛に言われるガキは嫌じゃない。
「剛が……剛が私を好きで…いて…くれるなら…」
「おっ なになに?」
たまに 極々たまに どうしようもなく伝えたくなる思いがある。
「……剛が私を好きでいてくれるならね……私は…何でもいいよ。」
ぎゅって 肩にある剛の手に力が入る。
「……剛 ずっとさ……ずっと一緒に…いてね。」
「うん 当たり前だよ? 奈穂。」
温かいぬくもりを右隣に感じて こんなにも幸せな気持ちで歩いた廊下。
どうか 消えないで。
ずっと 私の中にいて。
その時にそう強く願ったのものは あなたですか? それともあなたへの思いですか?
あの時に私の中にずっと消えずあってほしかったのは 本当にあなたのことだったのですか?
あなたへの温かい思いだけじゃなかったですか?
まだ 幸せだった。
そのままなら良かったのに。
だれも泣かなかったのに。
「奈穂 大峰がここにくるみたいだから待っててね。 俺はもう行くから。」
「うん またね。」
剛に連れてこられたのは グラウンドがよく見える場所。
グラウンドへ降りていく階段に座って 走っていく剛を見つめる。
「見放題じゃんこんなん…。」