*9月26日* ―それでも君が好き―
目が真っ赤で「あんた誰だ。」と思わず言ってしまう 鏡に写る私に。
どうしよう 何も考えずに泣きはらしてしまった。
だけど とりあえずここからでなくちゃ サボるのは1人じゃ心細い。
「……大丈夫 目を合わせなければ泣いただなんてバレないから。」
特に 夏架と砂依には弱いところを見られたくない。
できるなら潤以外知られたくはない。
トイレから出ると 知らない学校のように 今いた所と世界が違って見えた。
休み時間は騒がしくて 自分の足音なんか聞こえないのに 今は静まり返りすぎていて 息の音まではっきり聞こえる。
授業が進んでいる教室から感じる視線。
E組の前をゆっくり通る。
良かった 剛は寝てる。
D組は……佐々木くんがいる。
ゆっくり ゆっくり…。
男子の窓側の列の1番後ろに座る佐々木くん。
バチッ。
あっ 目が合っちゃった。
佐々木くんは目を見開いて かなり驚いているようだった。
だめ 泣いてサボったのがバレちゃう。
すぐに目をそらしたけど 佐々木くんにはがっつり見られた。
「…お腹が痛いんだよ。 うん いいうそだ。」
きっと 聞いてきたりはしない。
一昨日のはたまたま放っとけなかったから。
…心配してたのは 気紛れだろうから。
ガラッ。
教室は静かに授業が進められていた。
「あら高木さん 具合悪かった?」
「はい 少し。」
先生はベテランさんだから 勘が鈍いみたいで良かった。