*9月26日* ―それでも君が好き―
夏架と砂依は 私なんか見なかった。
良かった 泣いたの知られたら嫌だもん。
席に着くと 授業で使うためのプリントが2枚置かれていた。
自力でそのプリントの穴埋めをしていたから 集中できた。
だから 特に余計なことは考えなくてすんだんだ。
心配そうに私を見つめる健気な視線にも 気が付かなかった。
授業が終わってすぐに 相澤くんが私の前の席の机に座った。
「なぁ高木 どうしたんだ?」
やだ…相澤くん話しかけないでっ
「たーかーぎーなーほー。」
遠くからではあるものの 確実に感じる視線。
「…相澤くん 話しかけないで。」
小さな小さな声だった。
がやがやうるさい教室なんだから 聞こえないよね。
「えっ なんつった?」
ぐいっと近付く相澤くんの顔。
「……ごめん 何でもない。」
今作れる精一杯の笑顔。
また私は1人廊下に出た。
スタスタあてもなく進んでいく。
あまりに突然だった。
何となく感じていた距離。
それが確実になった一昨日。
そして 本当を知った今日。
あぁ 気を緩めたらまたほら……。