*9月26日* ―それでも君が好き―
*奈穂Side*
「…私 佐々木が好きかも。」
「……っえ!!」
ゆっくりとのぼる階段。
窓から入る風が心地良い。
「………佐々木くん?」
「うん…。」
真っ白な壁に書かれた落書き。
小さな小さな恋のかたち。
私と君が結ばれますよう 願いを込めて書かれた相合い傘。
そして 潤の恋の始まりだった。
「♪〜♪〜♪〜」
「えらいご機嫌だね 奈ー穂ちゃん。」
ぐわっと近付く相澤くんの顔。
だけど今日は拒んだりしないよ。
だって だってね 佐々木くんの恋が叶いかけているんだもん。
「んふふー。」
にんまり笑って見せると 困ったように私を見返した。
「なになにー? 何か良いことあったの?」
「教えてほしい?」
さりげなく夏架と砂依がいないか確認する。
まだ来ていないみたいだ。
「教えてほしいよ 奈穂。」
……っ!!!
奈穂? いま奈穂って言った?
「…やっやだ。 奈穂だなんて どうかしたの?」
…不覚にも恥ずかしいと思ってしまう。
奈穂だなんて 剛以外の男子に呼ばれることないからだ。