*9月26日* ―それでも君が好き―
*剛side*
恋を始めさせてしまうのが堪らなく怖い。
するすると手の内を返し 俺から離れていってしまうのではないか。
奈穂は そういうことをしない。
わかっている。
だけど 気が付いた頃にはもうそばにいない気がして。
一瞬のうちに離れていってしまう気がして。
だから 相澤がああいう目で奈穂を見るのが嫌だった。
虫酸が走る。
2人は同じクラスだし 何だか話もよくするみたいだ。
だから だから……。
気持ちを自分に引き付けておくことに必死だった。
出来るだけ一緒にいる。
それだけで精一杯だった。
相澤の前で大胆な行動をとったのは 見せつけたかったから。
あぁー 宣戦布告なんか大嫌いだ。
何だ 受けて立つなんか言わないぞ。
手放したくなんかないよ。
俺だって好きだ。
好きだ 好きなんだよ 奈穂のこと。
ずっと ずっと好きだったんだよ 奈穂のこと。
誰よりも いつも見ていたんだよ 奈穂のこと。
絶対に渡さねぇよ。
うん 前言撤回。
相澤怜也 宣戦布告受けて立つ。
2つ 恋を始めた5月25日。