*9月26日* ―それでも君が好き―
「佐々木くん ちょっと…。」
朝練から戻った俺を 廊下からやけに小さな声で呼ぶ高木。
廊下から呼ぶなら声張れよ…。
完全にテレパシーだったよな今の。
教科書を机にしまう手を止めて 呆れ顔で歩み寄った。
「お前さ あの声の小ささであの距離聞こえると思ったの?」
背の低い高木を上からにやって見下ろす。
「うるさいなぁ。」
むすっとした顔で拗ねる高木。
ちょっとだけ 宮津と怜也の気持ちが分かる。
「…で 何だよ?」
上から目線で俺が何と言おうと反論してこない。
興味無さそうで 高木は俺にあまりなつかないんだ。
「今日って佐々木くんの誕生日でしょう? おめでとうってことで 誕生日会するから 部活終わってから剛と一緒に相澤くんの家に集合ね。」
「………は?」
あれっ 今日って。
「今日 6月8日だよ。」
うそ 今日って俺誕生日!?
「まさか忘れてたの?」
表情変えずに 冷静に問う高木に感謝する。
16回目の誕生日を虚しくも忘れ過ごすところだった。
「…そっか ありがとう。」
普通にありがたく思った。
さらに誕生日会だなんて くさいことしてくれる。
「どういたしまして。」
嬉しさを隠さずに笑ってくれた高木。
宮津といるとき以外にこの笑顔見るの初めてだ。