*9月26日* ―それでも君が好き―




その日の部活終わりは いつになく気持ちが浮いていた。


「佐々木って 意外とパーティとかすきなんだな。」


バカにされていたのには気付いていたが ここは今の俺のテンションによりスルー。


「俺 誕生日会とか初めて。」


ちょっとってか結構嬉しい。


いつもの帰り道 いつもはいない宮津 向かうのが自分の家ではないという新鮮な気分。


「あれ 奈穂が考えたんだぜ? 感謝しろよな。」


へー 高木が考えてくれたんだ。


……ってことは ひょっとして大峰も?


え やばくない めっちゃすごい。


自分の誕生日を 好きな人が一番近くで祝ってくれる。


こんなに細やかな幸せはあまりない。


「…ありがとうって言っとけ。」


「自分で言えよバカ。」


宮津は何かと俺に似ている気がする。


考え方とか発言とか ピンと来ることがよくあるんだ。


「俺さ 相澤に宣戦布告されたとき 正直けっこーキツかったんだよね。」


いつもの駅の改札を通り いつもの道を歩く。


外はまだ少し明るかった。


「怜也って何考えてんのか分かんねーもんな。」


「本当だよ。 アイツを本気にさせた奈穂がちょっと憎いよ。」


静かな公園で元気にはしゃいでいる子どもたち。


その無邪気な笑顔を見て 宮津がさらに続けた。


「…奈穂との出会いはさ もちろん中学でなんだけど 何でこんな子の存在に今まで目を向けなかったんだろうって。 それぐらいに一気に好きになったんだ。 だから 何か相澤と被ってて嫌だ。」


「ぷっ。」


いや 吹き出さずにはいられないだろう。


高木って本当に 何者だよ。




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