*9月26日* ―それでも君が好き―




相澤くんのその顔がどうも苦手だった。


すごく申し訳ない気持ちになるから。


「…うん。」


だからか 相澤くんが絡んでくることを嫌だと言えなかったし 思ってしまうのも悪い気がした。


「早く行かないと。」


「うん 行こうっ。」


そんな私に 大人っぽい印象の強い相澤くんは 無邪気に笑って子どもみたいに付いてくる。


背も高くて きりっとした顔立ちに眼鏡。


なのにいつもヘラヘラしていて 甘え上手なところがある。


だが すごく冷静そうで何を考えているのは分からないその瞳だけは いつも変わらない。


ふとした時に相澤くんを見ると その瞳のように強ばった表情で寂しそうに窓の外を眺めていることがある。


だけど目が合うと にこって嬉しそうに笑って 彼は本当にミステリアスな存在だ。


「奈穂 ノート持たせちゃってごめんねー。」


教室に戻ると 先に戻っていた夏架と砂依が私に駆け寄ってくる。


「いいよ。 用があったんだもんね。」


「うん ありがとう。」


この夏架と砂依が ちょっと前まで私を目障りだと思っていたのは 本当に信じがたい。


最近そう思うことが増えた。


"私たちは性格が悪いから。"


仲直りをした時に言われた。


…そうかな? 特別悪いとは思えないけど。


チャイムがなって授業が始まると 更に色々な事が頭のなかを駆けめぐった。




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