北風と太陽と、その他諸々
はぁ…
また大きなため息が出た。
昨日から何回目だろうか。
何であんなことをしてしまったんだろう。
めずらしく、気持ちが滅入っていたのもあった。
そして、ユエに3日以上会わないことなんて、今までなかった。
昨日の帰り、ふと隣の家のリビングに電気がついているのを見て、もしかしたらと思い、玄関を開けた。
いたのは、案の定ユエだった。
たった3日会えなかったのが辛くて、久しぶりにユエを見たら、いつの間にか体が動いていた。
しかし、あんな反応されるとは思わなかった。
いつも危なっかしく、隙だらけでぼんやりしていて、何も考えていなさそうなユエが、抱きしめられて泣くなんて。
時より自分の気持ちを抑えきれなくなりそうになり、じっと熱い視線を送ってしまうことが何回かあった。それでもユエは、何も気がつかない。ヘラヘラと笑顔を返すだけだ。
だから、多分、普段なら、笑って許されるようなことだった。
きっと、怒っているだろう。
避けられているときにあんなことしたら、余計嫌われるのに。
…そうか、オレ、嫌われてるのか。
はぁ…
そしてまたため息が出た。
学校に着くと、妙な感じがした。
色んな奴がこっちを見ている。
「?」
不思議に思いながら教室に行くと、入るなり航介が走ってきて、いきなり胸ぐらを掴まれた。
「おい!理央!どういうことだよ!?」
「は?」
なんだか分からないが、航介はものすごく怒っている。
「は?じゃねぇよ!お前、友紀乃先輩と付き合ってんのか?!」
「はぁ?」
何を言い出してんだこいつは。
クラス中がこっちを見ている。
「とりあえず離せ。」
航介の腕を掴み、手を離させる。
自分の席に鞄を降ろすと、椅子にどかっと座る。
「何?オレが誰と付き合うって?」
航介を見上げて聞く。
すると、航介が自分の携帯の画面を、目の前に突き出して来た。
「昨日まわってきたメール。」
『件名:Fw:Fw:Fw:大スクープ!!
本文
生徒会長と、2年のサッカー部員との熱愛発覚♡
全校男子の憧れ、あの生徒会長に熱愛が発覚しました!
お相手は、こちらも女子にモテモテ、校内でも1、2を争うイケメン、和泉理央くん♡
なんと、先週の金曜日の放課後、2年の教室で抱き合っているところを目撃しちゃいました☆
しかも今日は、生徒会長のお家のお車で、2人仲良く帰って行かれましたよ!
ファンの多い2人だけに、ショックを受ける人が続出する模様です(`・ω・´)ゝ
↓証拠写真 』
写真には、車に乗り込む自分と友紀乃の姿が写っていた。
しばらくそれを見つめる。
「こういう盗撮って、犯罪じゃないか?」
一言感想を述べる。
「だぁっ!!今はそういう問題じゃないだろ?
これは本当か?本当に付き合ってんのか?ユエちゃんはどうしたんだよ!!」
携帯を顔の前に突き付けたまま、航介は叫ぶ。
「付き合ってるわけないだろ。」
やれやれとため息をつきながら、面倒だと思ってることを全く隠さずに答える。
「じゃあ、何でこんなメールがまわるんだよ。ユエちゃんと副会長は知ってるのか?」
航介の言葉にハッとする。
ユエと晴斗がもしこれを見てたら…
すぐにでも2人の所に行こうとしたが、非情にも、立ち上がる瞬間にチャイムが鳴り響いた。