スカイグリーンの恋人
「チーフ ご迷惑をおかけしました」
「いいえ 迷惑なんかじゃないわ あなたが無事でよかった」
「どうしてわかったんですか?
その……あの客がそっち方面の人だってこと」
「なんとなくわかるの 経験かしら あなたもわかるようになるわ
廉人君って勘がいいもの
それに あなたの ”天職だと思っております” って言葉
とっても感動しちゃった」
「あはっ なんか勝手に口から出てきたんです
でもそう言ってもらえると嬉しいです
チーフ お礼にご馳走させてください
知り合いにレストランのオーナーがいるんです
僕のコーヒーも一緒に佐名子さんに飲んでもらって……
あっ すみません チーフに飲んで欲しくて」
「ありがとう 楽しみにしてるわ……廉人君」
「はい?」
「仕事を離れたらチーフって呼ばなくてもいのよ」
「それって チーフを名前で呼んでもいいってことですか」
「私もその方がいいから」
見つめられた目で僕は胸を打ち抜かれた。
ドキドキがドクンドクンになって、血液が体を駆け巡る。
これって、僕に名前で呼んで欲しい……そういうことなのかな。
試すように彼女の名前を呼んだ。
「佐名子さん ご馳走するっての 約束ですよ」
「えぇ 待ってるわ」
小さくガッツポーズ。
伊織より一歩前にでた。
よしっ!
僕は勝利者に近づいた気分だった。