スカイグリーンの恋人
ところが……
ドリンクで修復された関係は、ドリンクが原因で破壊された。
飲みかけのコップを手に立ち上がったポロシャツの男が、体のバランスを崩し
コップの中身がこぼれ、
いがみ合っていた青シャツの男の肩をぬらした。
「おい わざとやっただろう」
「わざとだと? バカかおまえは」
「バカってどういうことだよ えっ もう一度言ってみろ!」
「バカはバカなんだよ」
ポロシャツの男も立ち上がり、相手の胸倉を掴む。
同時に心さんがポロシャツの男の背中から手を回し、動きを封じた。
「伊織 たのむ!」
心さんは暴れる男を抑え込むのに必死だ。
僕も片割れの青シャツの腕をつかもうとしたときだった。
青シャツの男は佐名子さんからトレーを奪い取って、心さんが動きを
封じている男目掛けてトレーを振り下ろした。
機内は騒然とし叫び声に包まれている。
騒ぎを早く収めなくてはと思うが、怒りを滲ませた男たちの抵抗は
半端ではなかった。
何度も振り下ろされるトレーは凶器と化している。
青シャツの動きを封じたいが、足場の悪い通路では思うように動きが
取れなかった。
バンッ と弾ける音がした。
音の方へ目を向けると、割れたトレーを振り回す男が勢い傾いていくのが
見えた。
その先には佐名子さんがいる。
「危ない!」 と叫んだと同時に、大きな体が目の前に滑り込んできた。
佐名子さんの体に覆いかぶさるように小野寺さんが体を丸めていたが、
その背中は血で滲んでいた。